東京高等裁判所 昭和36年(ラ)6号 決定
本件仮処分決定は、債務者森川勝雄、同阿久沢キヨが本件土地における抗告人の建築等同土地の占有使用を実力により妨害することを予防し排除することを目的内容とするものである。もともと、何びとも、実力をもつて他人の権利行使を妨げたり占有を侵奪その他妨害してはならないのはいうまでもないところであり、このことは、本件仮処分について、債務者はもちろんこれから本件土地の所有権を譲り受けるにいたつた者も同様であつて、その所有権を有すると否とによつて差異がない。このように本件においては、たとえば建物を所有することによつてその敷地に対する他人の所有権の行使を妨害している者から建物の所有権を取得した者が妨害者の地位を承継するにいたるのとは異なり、本件土地の所有権の取得と右のような実力による妨害行為をしてはならない義務とは法律上関係がない以上、阿久沢タキが本件土地の所有権を右森川から譲り受けたとしても、これにより当然森川の仮処分債務者たる義務ないし地位を承継するにいたるものでないことは明らかである。とすれば、本件土地の所有権の移転にともなつて右のような仮処分債務者の義務ないし地位が譲受人阿久沢タキに承継されることを前提として付与されたものと認めうる本件承継執行文の付与は、その前提を誤つたものである。
(千種 入山 荒木)